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市民公開編「排泄のメカニズム」のレポート

ものがたり在宅塾 市民公開編 第4回 2012/10/24

 

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「排泄のメカニズム」
佐藤伸彦氏(医療法人社団 ナラティブホーム理事長)

 

腎臓が尿をつくる。ほぼすべての血液が腎臓を通過し、老廃物がろ過される。つくられた尿は尿管を通って膀胱まで落ちてくる。
泌尿器疾患は加齢とともに起こることが多い。男性には尿道を囲むように前立腺があり、これが肥大すると尿が出にくくなる。前立腺がんによって排尿障害は起こらない。がんの中では血液検査によって発見できるため見つけやすい。女性は男性に比べて尿道が短く、加齢によって骨盤底筋が緩むと尿漏れが起こりやすい。早ければ40、50代で発症する。予防法のひとつとして骨盤底筋を鍛える体操がある。

 

■排尿のメカニズムは複雑
尿をためる時に膀胱はゆるんでふくらみ・尿道を開け閉めする尿道括約筋はしまる。逆に尿を出す時は膀胱が縮み・尿道括約筋はゆるむ。筋肉がゆるむ・しまるという正反対の動きを同時に行わなければならない。排尿のメカニズムは複雑だ。だから老いるとうまくできなくなる。排尿は尿がたまって反射的に行うことも、頭で考えて早めに行うこともできる。反射の場合は腰のあたりにある排尿中枢仙髄から信号が出る。
成人の排尿1回あたりの量は200~400ml(コップ約1~2杯分)、時間なら20~30秒。1日の排尿量は1000~1500mlだが、日によって多い少ないはある。1日の回数は5~7回だが、これも人によって差がある。起きているうちは3~5時間に1回の間隔。運転手など職業柄で回数の少ない人もいる。正常なら排尿のために夜起きることはないが、お年寄りになると1、2度起きることはあるだろう。

 

■前立腺肥大と過活動膀胱に注意
排尿障害は「下部尿路症状(LUTS)」と呼ぶ。畜尿、排尿のどちらに問題があるのかで分類される。
▽畜尿症状:頻尿(昼間1日8回以上、夜間睡眠中1回以上)/尿意切迫感・切迫性尿失禁(急にしたくなりトイレまで間に合わず漏らしてしまう)/腹圧排尿失禁(物を持ったり、咳をしたりした弾みに失禁)
▽排尿症状:尿勢低下(前立腺肥大症の典型的な症状)/尿線途絶/排尿遅延/腹圧排尿
▽排尿後症状:残尿感/排尿後滴下(中高年男性では尿道内残尿によって起こる。前立腺肥大症患者によくみられる)

 

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 下部尿路症状(LUTS)を引き起こす代表的な疾患として、男性なら前立腺肥大症が挙げられる。男女ともにみられるのは膀胱が過敏になる過活動膀胱。ほかにも、神経因性膀胱、膀胱炎(血尿が出る)、膀胱結石、膀胱などのがん、尿道の疾患などが排尿障害の原因になる。
排尿・蓄尿に問題があると、旅行や外出を控えたり、仕事や家事に集中できなかったりと生活に影響がでて生活の質(QOL)が低下してしまう。薬でコントロールすることもできるので、高齢だからしかたがないとあきらめてはいけない。
泌尿器科では排尿時間と量を記録する「排尿日誌」によって状況を把握する。男性の場合は前立腺肥大症の疑いがないか調べられる。

 

■頻尿に糖尿病や心疾患の疑いも
排尿の回数は飲んだ量と汗の量などによって異なる。身体は濃い尿と薄い尿をつくり分けることができる。体内に水分が少ない時には脱水症状にならないように尿を濃縮するわけだ。睡眠時には尿を濃縮しているが、その機能が加齢によって低下すると、おしっこに起きなければいけなくなる。排尿のために1回以上目を覚ますのは夜間頻尿。1回であっても困っているなら該当する。40歳以上は男性の約72%、女性の約67%が夜間頻尿とされる。
加齢による血圧上昇や睡眠障害が夜間頻尿につながっているケースは少なくない。糖尿病や心疾患が原因としてかくれていることがあり注意が必要だ。
頻尿(1日8回以上)の原因としては膀胱への刺激症状や残尿の増加、神経調節の障害、 糖尿病や心不全などが挙げられる。男性は前立腺肥大症が関係していることが多い。
咳やくしゃみ、重い物を持った時などに尿失禁する「腹圧性尿失禁」は女性に多い。膀胱や尿道を支えている骨盤底筋が弱くなるのが原因。男性に比べて尿道が短く、加齢や出産、女性ホルモンの低下なども関連している。骨盤底筋体操により改善可能。ビデオやパンフレットが用意されている。

 

◆質疑
Q:適当な水分量の目安は。
A:のどが渇いたら飲むのが自然。しかし、高齢になるとのどが渇いたという指令が出にくくなり脱水症状になりやすい。よって、排尿を気にして水分を我慢するのはよくない。一方で「血液がサラサラになる」という根拠のない誤った情報をもとに水を飲み過ぎている人もいる。