12.12.28

多職種連携編「泌尿器疾患について」のレポート

ものがたり在宅塾 多職種連携編 第4回 2012/11/26

 

「泌尿器疾患について」
一松 啓介氏(市立砺波総合病院泌尿器科医師)

 

泌尿器科に関係して在宅診療で問題となる
「カテーテル関連」「排尿障害(頻尿や排尿障害)」「血尿」について話す。

 

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■尿道留置カテーテルの詰まりと
感染症は必ず起きる

「腎ろうカテーテル」は腎臓と膀胱をつなぐ尿管が腫瘍や結石などで使えない場合に腎臓からカテーテルで尿を排出する。
「膀胱ろうカテーテル」は尿道からの排泄が何らかの理由できない場合に用いる。脊髄損傷などで排尿ができない人も含まれる。「尿道留置カテーテル」との比較で長所短所があり、合併症としての尿道炎や前立腺炎などは少ない、違和感が小さい、自然排尿ができるかどうか試せるのは長所。短所は隠すことができないこと、対応してくれる施設や病院が少ないことなど。
カテーテルが閉塞したら生理食塩水で洗浄する。2、3週間に1度程度交換する。抜けたなら、すぐであれば再挿入は可能。脇漏れする場合は管の位置が深すぎるのかもしれない。少し太いものにしてもよい。
 

 最も多く用いられるのが「尿道留置カテーテル」。使用の理由は尿が出ない(尿閉)という以外に、病院や介護者、本人が楽だからというのもある。なぜか分からないが入っていたということが少なからずある。肺炎で入院した時に入れられ、退院したのにそのままというケースなどだ。清潔であっても異物であり、合併症の恐れがある。できるだけ早期の抜去が望ましい。


尿道留置カテーテルにおける代表的なトラブル4点について述べたい。
▽入らない
カテーテル挿入時にはいずれにせよ痛みが伴うので陰茎を思い切り引っ張って入れるとよい。必ず最後まで入れてからバルーンを膨らませる。途中で抵抗があったら入り切っていないかもしれない。最後まで入って尿がでるかどうかを確認する。心配なら膀胱洗浄をして入れた水が出てくるかどうか試してみる。無理をせずに泌尿器科医に相談してほしい。医師は尿道鏡を使用して入れる。
▽抜けない
固定水を追加してポンピングを繰り返したり、カテーテルを切断したりするなどして固定水を抜く。カテーテルのバルーン固定水には滅菌蒸留水を使用している。
▽詰まる
尿路感染症とカテーテルのつまりは100%起こると考えてほしい。感染症で高熱がでるのは腎盂腎炎、前立腺炎、精巣上体炎。膀胱炎で高熱はでない。
詰まりの予防としては、飲水/シリコンコーディングなどのカテーテルを使用/尿のアルカリ化防止のためにビタミンCやクランベリージュースを摂取する、など。血尿を繰り返す場合は結石や腫瘍の可能性があるので病院を受診してほしい
▽脇漏れ
膀胱排尿筋の不随意収縮が原因で脇漏れが起きることがある。カテーテルを入れているために神経が過敏になり膀胱が無意識に収縮する。カテーテルの位置を変える、固定水を減らすなどを試してみる。安易にカテーテルを太くすると尿道皮膚炎や感染のリスクを増大させる。尿道が広がりさらに漏れやすくなることもある。
膀胱をリラックスさせる抗コリン剤による治療が考えられる。あまりに脇漏れがひどい場合は一度カテーテルを抜いてみるのもよいだろう。

 

 

■急な尿意と失禁は過活動膀胱の可能性
畜尿期には膀胱が緩み、尿道括約筋は締まる。排尿期には膀胱が締まり、尿道括約筋は緩む。この緩み・締まるがうまくいかないと排尿に障害がでる。
尿量は1日1000~2000ml。1日2500~3000mlは多尿。1回あたりは200~400mlで、日中5~7回、夜間0回が正常。日中8回以上、夜間1回以上は頻尿だが、本人が困っていなければ差し支えはない。
頻尿の原因は多尿/睡眠障害/前立腺肥大/過活動膀胱/尿路感染などが考えられる。
多尿は水を飲み過ぎているケースが多い。メディアなどの影響で、水を多く摂ると血液がさらさらになると思っている人が多いが医学的な根拠はない。このほか薬剤性、高血圧、尿崩症による多尿も考えられる。排尿記録をつけてみるとよい。
睡眠障害が頻尿の原因であることは少なくない。おしっこがしたくて起きるのではなく、目が覚めるからおしっこに行くとも考えられるからだ。生活の改善(昼寝を短く、夜のカフェイン摂取を控える)や軽運動、風呂にゆっくりとつかるなどして深い眠りをとるようにしたい。睡眠剤を使うこともある。
(佐藤医師)心不全や早朝高血圧による頻尿も考えられるので注意してほしい。
 

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 「過活動膀胱」は頻尿/尿意切迫感/切迫性尿失禁などの症状がある。おしっこの回数ではなく、急に我慢できない強い尿意(尿意切迫感)があって、トイレまで間に合わなくなる。治療法としては抗コリン剤の使用がある。膀胱の筋肉に指令を伝達する物質・アセチルコリンの働きをブロックして膀胱の過敏な働きを抑える。薬以外でも尿意を我慢して膀胱を広げる膀胱訓練や骨盤底筋体操などの対処法がある。膀胱炎などほかの原因で尿意や尿漏れが起こっている場合もあるので、まずは原因を明らかにしたい。

排尿困難になる原因として、前立腺肥大症と神経因性膀胱がある。
前立腺は男性の膀胱の下にあり、肥大すると尿道を圧迫する。刺激症状(おしっこが近い)、閉塞症状(残尿感)、尿閉(おしっこたまっているが出ない)などの症状がある。治療には前立腺の緊張を和らげるα1受容体遮断薬、肥大した前立腺を小さくする抗男性ホルモン薬などを用いる。それでもだめなら前立腺を削る手術をする。
神経因性膀胱は神経の病気によって膀胱の働きが悪くなり、排尿困難や尿失禁の症状がでる。薬による治療や尿道留置カテーテル、膀胱ろうカテーテルなどで対処する。

 

 

■血尿が出たら収まっても一度受診を
血尿の原因としては腫瘍(腎がん、腎盂尿管がん、膀胱 がん、前立腺がん)/結石(腎結石、尿管結石、膀胱結石)/感染(膀胱炎など)がある。腫瘍は自覚症状(痛み、頻尿など)がないため、血尿が収まったとしても放置してはいけない。病気を見つけるチャンスだと思って泌尿器科を受診してほしい。女性は尿道が短く膀胱炎になりやすい。
がんの手術で膀胱を全摘した場合、尿路変更術が必要になる。回腸を利用し、体外に出す、代用膀胱を造設するなどの手術もある。
結石は腎臓、尿管、膀胱にできる。尿管結石は激しい痛みを伴う。カテーテルが入っていると膀胱に結石ができやすい。結石を放っておくと尿の流れが悪くなり、腎盂腎炎になりかねない。腎臓に圧力がかかり働きが悪くなる。砕石や摘出の必要があるが、小さな石ならば自然に排出されることもある。
寝たきり、尿道留置カテーテルの患者の血尿の原因としては感染症が最も多い。抗生剤を使い、血の塊があるなら取り出す。内視鏡で止血するケースもある。

おしっこに関するトラブルは多いが、泌尿器科の専門医は少ない。困ったことがあればぜひ相談してほしい。

 

 

◆質疑
Q:前立腺肥大の術後経過について。
A:前立腺がんを手術すると尿道括約筋が傷つくので尿漏れがある。程度には個人差があるが、半年すると約9割の患者は漏れがほぼ収まり使用するオムツが1枚以下になる。
 

Q:血尿について
A: 尿に少し血が混じるだけでかなり赤く見える。驚いて受診する人が多いが、血尿で貧血になることはない。原因として多いのは膀胱炎だが、薬で治療できる。女性は健康診断で尿潜血と判定される人が多いが、その中で治療が必要になるのはわずかだ。検尿では膣の分泌物が混じらないよう中間尿を採取して検査するほうがよいと思う。

 

Q:尿道カテーテルの入っている患者の入浴時の対応について
A:バックをつけたままでも、外してカテーテルにキャップをつけてもどちらでもよい。入浴の時間で尿がそれほどたまることもないだろう。