自分史

 ひとりが亡くなると百科事典1冊が消えてなくなる、といわれる。長い年月の経験によって刻まれた貴重な記憶がなくなるからだ。ナラティブホームがスタートしてから、もう50人に近い方をお送りしているが、もっと話を聞いておけばという方が少なくない。記録として残しておくべきだという話も実に多い。そんな悩みをもっていたところ、こんな男があらわれた。赤壁逸朗君だ。地方紙を潔く退社して、フリーのライターで独立している。志が高く、心やさしい青年である。あるパーティで遭ったところ、ある人から自分の人生を話すからまとめてくれないかという依頼があり、何度も取材してこのほど仕上げたという。自分史である。もし、他から依頼があっても引き受けてくれるかい、と頼むと、お会いして通じるものがあればやりますとの返事だった。もしそんな希望をお持ちの方があれば、ぜひ連絡をいただきたい。もちろん有料となるが、そんな破格なものではない。
 そんな分野をオーラルヒストリーという。文字を残さない人々の、聞き取りによる歴史記録として、民俗学者や民間史学者たちによって長年にわたって積み重ねられてきたもので、いわば無名の、貧しい労働者や庶民が対象となっている。とてもとてもわたしのような者の人生など、お聞かせするほどの値打ちもございませんという人が、意外に歴史の真実を知っているのである。功なって名を遂げた人は、歴史を捻じ曲げてまで、自分の正当なることを主張している場合が多い。
 

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