道後温泉「坊ちゃんの郷」

 愛媛県は松山からの来客である。在宅を中心にへき地診療もやる「医療法人ゆうの森」代表の永井医師を中心に5名の方が、アパホテル砺波に2泊というスケジュールで来訪された。永井医師は1999年にひとりで在宅を立ち上げた。いわば大先達で、加えて「たんぽぽ先生の在宅報酬算定マニュアル」を自ら執筆されている。ナラティブでも5冊購入し、テキストとしてスタッフは傍においている。そんな先生ゆえに、どう対応したものか思い悩んでいたが、会ってみるとがっちりした体格の47歳、精気が満ち溢れている。
 来訪の目的は、看取りまでできる高齢者住宅を建設したいので、「ものがたりの郷」を参考にしたいというもの。でもこんな時は、こちらが参考になることがとても多い。喜んでということで、一日行動をともした。厳しい質問もあるが、そこは同業、当方のいたらない点も率直に申し上げた。砺波、庄川、井波と観光もかねて十二分な交流となった。
そんな具合で、もちろん夜の懇親会である。そこでは5人ともリラックス、フリートーキングで夢を語り合った。
 「道後温泉の診療所を組み込んだ高齢者住宅がいい」「そうすると、坊ちゃんの郷ということになるね」「そりゃ、いいわ。絶対に受ける」「愛媛出身の団塊世代で、東京、大阪で活躍し、老後は故郷でと思う人は多いかもしれない」「でも、このネーミングだと全国から集まると思う。俳句趣味の人も多いから、全国シニア俳句選手権なんかも、この際いいのでは」「建設だけど、ものがたりの郷みたいに不動産に投資したい企業もあると思うから、われわれで建てなければならないこともないんじゃないの」「そりゃ、いい意見だ。銀行筋にさっそく打診してみる」。
 という具合に、とんとん拍子に話が進み、「道後温泉坊ちゃんの郷」がまるで決まってしまった。こんな話を聞いていると、「田舎の勉強、京都の昼寝」ということわざを思い出した。旅に出ることで、頭の中がとんでもない活性化状態になり、奥底からいいアイデアが飛び出してくる。

 みなさん、行き詰った時は、書を捨て、旅に出るべし。(K)