13.09.27

ものがたり在宅塾2013 第1回 「ドイツにおける終末期の現状」

ものがたり在宅塾2013 第1回 2013/8/19 般若農業改善センター

 

「ドイツにおける終末期の現状
浅見 洋氏(石川県立看護大教授

  

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 現在、日本では約8割が病院で死亡し、自宅で亡くなる人は1割程度。病院での死亡の多さは国際的にみて例がない。ドイツでは死亡場所が病院、ケア付き住宅などの施設、自宅が3分の1ずつになっている。中でも看取りも行う施設の存在が特徴的である。日本では特別養護老人ホームに入所できない人が老人保健施設で亡くなるケースが増えている。しかし老健は社会復帰のための施設という位置づけがあり、看取りの体制づくりに苦労している。ドイツの施設のあり方は参考になるだろう。
 石川県白山市など高齢化率の高い地域を対象に調査したところ、自宅で療養したいという希望が減っていた。介護する家族への負担や医療への不安が理由になっているようだ。これらを払拭する必要があり、ナラティブホームのあり方はこの方向性にかなっている。

 

 

■生活の場であることを重視

 2012年、2014年にドイツでの看取りについて視察した。ドイツでは1995年に介護保険法がスタートしている(これが日本の介護保険のモデルになった)。病院は回復の見込みのある人の治療の場であり、自宅が不可能ならば高齢者介護施設で療養する。その担い手になっている施設は約70%がキリスト教系の2つのNPOによって運営されている。施設では介護と看護の両方ができる「高齢者介護士」が働いている。これは日本にはない職種だ。施設の嘱託医ではなく各入所者のホームドクターが往診するかたちがとられている。
 人権を尊重し、生活の場であることが重視されている。民間企業の参入があってもNPOに人気があるのは、金儲け主義ではないこと、キリスト教を背景にした奉仕の伝統が支持されているからだ。

  

 

 

■看取りケアをコーディネート。ボランティアも協力

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 施設には看取りケアをコーディネートする責任者が存在する。「ディアコーン」と呼ばれる「キリスト教社会福祉士」だ。ドイツ語圏において特徴的な存在で、宗教教育を受けている。入所希望者のカウンセリング、入所者への寄り添い、看取りなどが役目になる。十字架や聖書などが看取りに必要となるものが収められた木箱が用意されていた。聞き取りに対し、「“最後の瞬間をよりよくすること”が仕事である」と語っていた。「ひとりでは死なせない」という考えが根づいていると感じた。
 ホスピスボランティアとの連携も特徴である。約1年の教育期間を経て、付き添いなど入所者の精神的なケアに協力している。ドイツ国内では約8万人が活動。定年退職した人が多く参加し、使命感をもって携わっている。「最期の瞬間に寄り添うことには喜びがある」との言葉を聞いた。「自分自身の死を考えることができる重要な活動」とも捉えられている。複数のボランティアが「死期が近づくと『故郷に帰りたい』といった主旨の言葉が発せられる」と話していたのは印象的だった。死に向き合って天国ではなく、故郷への思いを強くする思想は日本でも古くからみられる。東日本大震災を経験し、その考えがよりクローズアップされていると感じる。

 

 

■緩和ケア事前指定書を法制化

 ドイツの施設では、入所者が亡くなった場合にその家族の悲しみに対するケアも行っている。また、玄関には亡くなった人の写真や思い出の品を飾るスペースがあり、お別れの会が催されることもある。死者の扱い方の違いを感じた。日本の病院などでの扱いはさみしすぎると思う。
 ドイツでは緩和ケアの事前指定書が法制化されている。当事者が意思を表明し、それが守られるようにチェックする代理者が指定される。日本のように家族任せではなく、自分は自分の思うように生きたいという気持ちが強い。
 子どもホスピスも存在する。単に亡くなるための施設ではなく、生きることを支えるための施設であり、親や兄弟姉妹との人生をサポートしている。「誰もひとりで死ぬべきではない」という考えに支えられている。一日一日を大切に生きること、その生きた時間が家族の新しい人生にもつながると感じた。

 死は生きることの延長線上にあり、生きていたように死んでいくのがよいと思う。日本でも在宅で死ねない場合の代替の場が必要であると考えている。