12.10.05

市民公開編「砺波市の医療/介護/福祉の資源」のレポート

ものがたり在宅塾 市民公開編 第1回 2012/07/25 般若農業構造改善センター

 

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「砺波市の医療/介護/福祉の資源」
佐藤 伸彦氏(医療法人社団ナラティブホーム理事長)

 在宅塾/市民編の第1回として、医療について制度面など基本事項を伝えたい。疑問があればどんどん質問してほしい。

医療施設のうち病床数20以上のものを病院。それ以下のものを診療所と呼ぶ。
一般病床は全国約100万床あり、都道府県別の数で富山県は24位にある。療養病床は全国約35万床で富山県は8位と上位だ。
一般病床数を減らしつつ、現在の急性期医療を「高度急性期」「一般急性期」「亜急性期等」の段階に分け、それぞれの対応病床群を整備していくのが国の方針。亜急性期等の病床群は、医療の必要度がそれなりに高い状態で退院してくる患者や、症状の悪化した在宅療養者らの受け皿を想定している。

■医療保険制度のしくみ
医療保険とは、医療機関の受診によって発生した医療費について、その一部または全部を保険者が給付する仕組み。日本では働いている人は事業所の保険に加入し、公務員なら共済組合、自営の人なら国民健康保険に加入しているように保険証を持たない人はほとんどいない。これが国民皆保険制度だ。1961年(昭和36年)には皆保険が実現し、被保険者は自己負担がゼロで医療を受けられる時代も以前はあった。自己負担額がゼロから1割、2割と増え、現在は医療費の3割を病院などの窓口で支払っている。
被保険者であるみなさんは保険者に保険料を納付して保険証をもらっている。医療機関を利用したら費用の一部を病院に支払う。病院は残りの金額を保険者に請求している。

■高齢者医療制度の変更
1983年の老人保健法によって、高齢者はほかの健康保険の被保険者資格を有したまま老人医療が適用された。高齢化によって国の負担する医療費が急増したため、75歳以上と前期高齢者(65~74歳)で障害のある者を対象にした「後期高齢者医療制度」が2008年にスタートした。ほかの健康保険から離れ、独自に保険料をプールするところがこの制度のポイントであり、問題でもある。保険料は年金から天引きされ、全国平均では年額約72000円。しかし、これは都道府県によって違いがある。

 

■高額医療費制度/領収書は保管を

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 高額医療費制度によって、どんなに高額な医療を受けても自己負担の上限は一般的な患者なら70歳未満は月8万円ぐらい、70歳以上は12000円で済む。この制度がなければ安心して医療は受けられない。米国には胃ろうを施す文化がないが、このような制度がなく医療費が高額になるためだ。
現在は医療費と介護費を合算して高額になる場合にも自己負担額を一定に抑えることができる。とにかく領収書は保管しておくことだ。

■介護保険制度/保険者は市町村
介護保険の保険者は市町村。しかし、人口規模が小さな自治体では保険の利用が増大すると支え切れなくなる。例えば、小さな村に老人保健施設ができるとすぐに制度は維持できなくなる。
当初はコンピューターによる要介護認定の一次判定が認知症などで軽く判定されることがあったが現在は見直されている。介護度は要支援から要介護度1~5の6段階。車いすの人は要介護度3ぐらい、同5は寝たきりの状態。同1以上なら施設に入ることが可能だが、実際には入所希望者が多いため同3以上でなければ利用は難しい。
デイサービスは最もよく利用されている介護サービスで、正式名称は「通所介護」。費用の1割負担と食費で利用できる。デイサービスはリハビリをしないが、デイケアはリハビリを行う。「小規模多機能型居住介護」は宿泊が必要な時は泊まることができる。グループホームは「認知症対応型共同生活介護」を指す。

 

 

◆質疑
Q:国が一般病床数を減らそうとしているのはなぜか。
A:入院が長くなると医療費がかかる。国は医療費を抑制したい。治療が終わった患者にはなるべく早く退院してもらって医療費を削減したいので、病床数を減らす一方で、入院が3カ月を超えると病院に入るお金が半額以下になるようにするなど制度設計によって早期退院へと誘導している。病院は入院患者の回転が早くなるように頑張るが、実際はそんなに早まらない。経営面とのせめぎ合いがある。患者と看護師の割合も制度では10:1より、7:1にしたほうが病院にはお金が入るが、看護師を増やせばそれだけ人件費がかかるわけで算段が必要になる。
日本は患者の入院期間が外国に比べて長い。ほかの国なら盲腸は手術して翌日には退院する。実費負担になりお金がかかるからだ。国の負担している医療費は約30兆円。これはパチンコ産業の売上高とほぼ同じ。巨額ではあるが、日本のGDPを考えると、その占める割合はけっして高くはない。減らそうとするのは疑問だ。

Q:以前は共済も企業保険も拠出金で老人保健を支えていたと思うが、なぜ制度が変更されたのか。
A:拠出金が増大し、企業保険が負担するのが難しくなった。景気のよい時代には大企業はそれぞれに保険をつくっていたが、全国の老人まで支えることはできないと、国が保険者になる保険へと移る企業が増えた。そうなると国も支え切れないので、独自に保険料をプールする後期高齢者医療制度に移行した。


Q:介護認定の際に、現実とはかけ離れた判定がでることがあると聞く。どう対応すればよいのか。
A:訪問調査の際には家族が同席し、困っていることがあれば伝えるようにしてほしい。調査の時にお年寄りが頑張ってしまうことはある。日ごろの状況を知らせてほしい。

 

Q:特別養護老人ホームなど入所待ちしていても、なかなか空きがでない。どうすればよいのか。
A:施設を増やしてほしいとの要望はあるが、新設するとその分だけ介護保険が利用されるわけで、制度がもたなくなる。国も、保険者である市町村もそれを分かっていて規制している。砺波市に新しい施設ができることはないだろう。また、20年もすれば高齢社会も一段落するという側面もある。国は在宅医療を推進しようとしている。

 

Q:身障者1級は医療費の自己負担が免除されるが、介護保険は1割負担。どちらを利用するのか。切り替えなど手続きが必要なのか。
A:どちらの保険を適用するかは、トランプのようにどちらのカードが強いのかという判断になる。原爆やスモンなど薬害の被害者についてはすべての医療が無料になる。それらに次いで強いカードが介護保険。身障者1級よりも強いので2つ持っている人は介護保険が適用される。介護保険が優先されるのは保険者が市町村で母体が弱いから。介護保険が無料になることはないが、医療保険の免除はいろいろとあり得る。介護保険はもともと何らかの障害がある人を対象としており、その一部の人を特別扱いしないということ。